国連イラク復興支援とUNAMI2009-10-27 23:53

現在イラクではFAO、UNDP、UNICEF、UNHCR等、16の国連機関が、
農業、教育、ガバナンス、保健、インフラ整備、難民支援、選挙支援等の分野を
中心に復興支援活動を展開しています。

これらの国連機関は、イラク全土にフィールドオフィスをもち、
当然ながら組織としての活動目標を達成するために尽力しています。

国連は1950年代よりイラク国内で各種支援を行ってきましたが、
近年のイラク支援では2003年に設置した、
国連イラク支援団(UNAMI:UN Assistance Mission for Iraq )を通して、
一連の安全保障理事会決議指針のもと復興支援活動の促進や調整を図り、
イラクにおける国連の役割強化に務めています。

UNAMIはこれまで例えば、イラク憲法起草支援、人道的援助活動等の調整を通じた支援等も行ってきました。

さて、一方でUNAMIはこれからイラク入りする援助機関関係者向けの
安全対策訓練も行っています。

以前ヨルダン軍協力の元でこの訓練を受けましたが、とにかくつらいです。
重さ10キロ以上もする防弾チョッキ、5キロはあるヘルメットを
一日中つけて(↓)、砂漠の中を走り回るスパルタでした。


ところで、数年来UNAMIにてバグダッド勤務とアンマン勤務を
1ヵ月毎に繰り返す友人がいます。

バグダッドでは大変緊張感の高い生活を送っているため、
アンマンに来る度にいつも安堵感を見せている様子が印象的です。

そこで、せっかくアンマンに戻ってきたので、
家におしかけ40歳にもなる大の大人のお誕生会を開催(↓)


でもこれもアンマンだからこそできることの一つです。
何時まででも続けられる宴です。

アンマンから中東を見つめる2009-10-11 04:17

ヨルダンは、人口630万人(2009年度推定値)、面積92,300km2(日本の4分の1)の小さな国で、これまで数奇な運命を辿ってきた国でもあります。
イスラエル/パレスチナ、シリア、イラク、サウジアラビアと国境を接し、エジプト、トルコ、レバノン、イラン、クエート等とも隣接していることが分かります(↓)

※画像はウィキペディアから引用。




対米関係やその他の欧州諸国との関係が安定しており、中東諸国とも一定の友好関係を築いています。そのため、ヨルダンでは欧米諸国と中東諸国の両者の政治的見解について、客観的な立場から情報が提供されています。
また、資源の乏しいヨルダンは欧米諸国や同じイスラム宗教国家同胞としての湾岸諸国より各種援助が提供され毎年財政赤字縮小を図っています。

第二次世界大戦後の中東戦争を発端とし、その後の湾岸戦争、イラク戦争等において、大量のパレスチナ、イラク難民が発生し、ヨルダンはこれらの難民を受け入れてきました。特にパレスチナ難民についてはヨルダン国籍も与え、国家財政が逼迫する中でも各種生活支援を行ってきました。一方で、度重なる周辺国の戦争の度に、富裕層が流れ込み、さらに港湾や道路のインフラ開発が進むといった戦争特需も創出してきました。

こうした周辺国の混乱にも拘わらず、比較的安定した国家であり続けられたのは、これまでの国王の平和維持に対する政治的感覚が優れていたことも一因です。
また、秘密警察の能力が極めて高く、現在でも国内の治安維持に貢献しています。

小国であること、諸外国と友好関係を築いていること、治安・政治が安定していること等、ヨルダンの置かれた環境を中東地域援助における強みと捉え、各種支援団体がアンマンに拠点を置き、中東の動向を見つめています。
それだけでなく、戦災国関係者と支援団体がアンマンで協議を頻繁に実施しており、さらに戦後の経済発展を支える各種民間企業もアンマンに集結し、事業展開のタイミングを見計らっています。

このためヨルダンでは中東において支援を必要としている国、支援を実施する団体、民間企業のそれぞれの動向について把握することができ、中東地域全体の動きを俯瞰できる、極めてユニークな立場にあると言え、この利点を中東地域支援に活用していくことが重要であると考えます。

イラク電力回復への道2009-09-29 23:53

イラクの電力需要は現在1万MWを超えているにも拘わらず、実際の供給量はその約半分です。
常時慢性的な停電が発生しており、裕福な一般家庭では大型の自家発電装置を購入し、なんとか電気をまかなっているものの、多くの市民は停電中、夏は猛暑の中、冬は暗闇の中、ひたすら電気の回復を待つ生活を送っています。

足りない電力を物理的に補うためには、電力事情の実態を正確に把握した上で、燃料の確保、関連施設の回復、電気料金回収システムの整備、環境に配慮した施設運営等が必要です。
さらに、これらの関連業務を監督する組織、計画する組織、実施する組織の体制も併せて整備する必要があります。
前者については、電力需給ギャップを緊急的に埋め合わせるため、イラク国内では多くの発電所整備事業や送配電網整備事業が公的機関や民間企業により進められていますが、後者についてはこれまでの復興途上の混乱もあり、十分に取り組むことができませんでした。

今後は国全体で安定した電力が供給できるための体制づくりを急ぐ必要があり、その上で実現可能な国家全体の電力開発目標・計画を構築することが重要となります。
イラク、クルド地域の首都エルビル。
中国企業によるソーラーパネル外灯が実験的に設置されています。